何か古風なタイトルの映画
『君の名は。』 は、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』などの秀作をクリエイトした
新海誠が監督と脚本を務めた最新作アニメ です。
今までの新海監督の作品は小スクリーンにて単館上映される一部の熱狂的なファンのみ訴求する作品でしたが、本作品は東宝が配給し大手シネコンで上映される、新海監督としてはメジャーデビューの作品になっています。
そんな訳でキャラクターデザインに『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』シリーズなどの田中将賀、作画監督に『もののけ姫』などの安藤雅司など日本アニメ界の錚々たるメンバーがバックアップしていて、新海誠ファンの私も大いに期待した作品でした。
VIDEO あらすじ 1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。 実は予告編を見て、従来の繊細なキャラクターとは異なる流行りの、言い換えれば現代的なフォーマットのキャラクターデザインになってしまい一抹の不安を持っていました。
そして実際に鑑賞してみると、その不安は的中、何か
細田守監督の『時をかける少女』や『サマーウォーズ』を見ているような既視感覚を持ってしまいます。 新海監督の独壇場である、日本アニメ内でも稀有な珠玉の背景描写はそのままなんですが、ドタバタ動くキャラが背景から浮いている感じがしました。
話の内容は最後が新海監督作品で初めてのハッピーエンドで終わり、鑑賞後の爽やかさは非常に良かったですが、話の展開が性急過ぎて少し置いてけぼりを喰った感じです。
下記の点が決定的に漏れているんです。
●二人はどんなきっかけでお互いを好きになったのか?
●何故心と身体が入れ替わる対象がこの二人でなければいけなかったのか?
●主題歌で煩いくらい連呼している『前前前世』からの赤い糸の繋がりが一切表現されていない。
●スマホに日記つけているのに、時間軸が違っている事に気づかないのはおかしい。
●彼女が最後に父親を説得しているシーンがなく、父親の変節の理由が全く不明。
などなど、観た人がそこは脳内補完して下さいといった非常に投げやりな作りが鼻につきました。
それに私は全然知らなかったのですが、音楽を担当したのが
RADWIMPS とかいう4ピースロックバンド(最近の二十歳以下に絶大な人気を誇っているらしい)で、劇中に何曲も歌入りでやかましく入ってくるのだから、これには参ってしまいました。
新海作品は過去に音楽を担当していた天門との相性が抜群だったので、完全に時代にこびた売れ線を狙った起用と感じます。
はっきり言ってアニメ映画はミュージシャンのMVじゃないんだから、その点では全く評価できません。 過去に『秒速5センチメートル』のラストで使用した「One more time, One more chance」(山崎まさよし)や、『言の葉の庭』のラストを盛り上げた大江千里のカバー曲「Rain」(秦基博)の名曲と比べたら、主題曲の持つ力が決定的に劣っていると感じました。
以上、本作品の欠点を挙げましたが、後半から一気に動き出す展開や、『秒速5センチメートル』における鬱的なラストを明るくリニューアルしたような内容なので、今回は一般にも評価が高い作品になったと思います。
この作品の興行成績は最終的に60億円にもなりそうな大ヒットだそうです。
観ていた方々のほとんどは大学生以下の年代だったので、
私のようなおんつぁんはターゲット外だったのでしょうね。 いろいろ作品の気に入らないところを羅列しましたが、私的には新海監督の究極の美しい背景描写を大きなスクリーンで浸れたことは、とても嬉しく感じるのでした。
背景画に見入って、一瞬たりとも見逃すまいとスクリーンを注視する作品って他の映画ではありえませんよ。 いろいろプラス・マイナスがあるけど、私的に
今回の評価は少し甘めに80点です。 新海誠監督はこのまま売れ線の大衆に迎合した作品しか作れなくなっていくのでしょうか?
まだまだ全盛期の宮崎駿の域まで達していないと感じます。
しかしそのポテンシャルは充分持ち合わせている監督だと思いますよ。
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2016/09/01(木) 18:00:08 |
映画
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